2019年最後の娯楽座本公演で取り上げた題材は、股旅作品の先駆者・長谷川伸。
その長谷川伸役に抜擢されたのは、娯楽座内で安定した芝居を魅せる村本准也。
時は昭和30年のクリスマスイブ。
70歳を超え老弱した劇作家・長谷川伸は、自身が書いた原稿を投げ捨て一人きりの自宅で首を吊ろうとする。
首吊りの縄に手をかけた時、長谷川伸を呼ぶ不気味な声と共に地獄の亡者が長谷川伸に襲い掛かってきた。
そして長谷川伸の前に現れた一人の天使。
自殺を止めに来たという天使は、ディケンズのクリスマスキャロルのように長谷川伸の「過去・現在・未来」を幽霊たちが見せるから考え直してほしいと提案する。
生ギターのシャンソンと芝居で長谷川伸の幼少期から劇作家になるまでを見せる過去。
長谷川伸作品の主人公が自殺を説得しに来る現在。
前衛的なパフォーマンスで発表するはずだった作品たちが出てくる未来。
全てを見終わった時、長谷川伸の自殺する気持ちは変わらなかった。
天使の本当の思惑とは、幽霊たちは何者なのか、そして長谷川伸は自殺するのをやめるのか。
全ては長谷川伸の家で起きたクリスマスイブの夜の出来事。
主役の長谷川伸として村本准也が芝居全体を引っ張り、今公演の座長である矢原加奈子も天使役・女剣劇の座長役として全体をまとめた公演となった。
噛家坊と哀原友則が漫才師役で笑い部分を担当し、コースケ☆原澄人は吉川元祥・三宅潤を引き連れミュージカル部分を先導。
女性陣は真面目できっちりした部分を生かし、ダンスだけではないチームワークも存分に発揮した。
また、ゲストの観月ゆうじさんと旅流草一郎さんはドラマチックな歌声とギター伴奏で過去のシーンを劇的にしてくださり、白川和子さんは長谷川伸を説得する同世代の者として作品を大きく支えて下さいました。
どんでん返しや急展開が多い娯楽座作品の中で、今作品は分かりやすいテーマの中ハートウォーミングな作品となった。
振り幅が広い娯楽座が次回挑む本公演は来年2.3月。
脚本も自分たちで書きチームごとに分かれてこれまでの経験を活かす、オムニバス公演となります。
来年も大江戸ワハハ本舗・娯楽座の本公演をよろしくお願いいたします。